桜色ノ恋謌
言ってすぐに背を向けてしまったから、鳥羽さんがどんな顔をしているのかは知らないけど。



それでも。



こんなどす黒い感情を抱えて、仕事なんてしたくない。



「……俺が今の咲絢のマネージャーには適任じゃない事は、……分かってる……。でも、一応今後の予定を話したいから、あっちの席に行こう?咲絢」


悔しいけど、大事な仕事に穴は空けられないから仕方なく着いて行った。


だけど、胸の靄は晴れないままだよ。


これって、なんだろう?


陽菜乃ちゃんと一緒にいる鳥羽さんを見ると、胸がどす黒く染まっていく。



だから、あんまり二人の近くには寄りたくないのに。



「……今日正式にオファーが来た仕事なんだけど、大庭さん主演の学園ドラマにレギュラーでの出演が決まったよ。共演者は他に桜小路公佳、大地健之、月島翔太。……咲絢達の仲の良さに、プロデューサーが目をつけたらしい。ちなみに顔合わせは再来週になってる」


……へぇ。いつものメンバーで仕事ができるなら、現場に入っても苦にはならないかな?

でも仕事は仕事だから、きっちりこなすけど。


それに大庭さんとも映画で共演はしてるし、全く知らない人に囲まれてやるよりは気楽と言えば気楽になるかな?


「他にも、衛生局のキッズチャンネルでの番組のレギュラーが決まった。ナビゲーション役でね」

「……ナビゲーション?地方に行ったりするんですか?」


地方に飛ばされるのは、ちょっとスケジュール的にキツいって分かってるの?鳥羽さん。



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