桜色ノ恋謌
今の私には、先に進む道しか残されていない。


恭哉の手を取った時に私は決めたんだ。



過去は過去だと。



それに、鳥羽さんには陽菜乃ちゃんという存在がある。


もし例え鳥羽さんの心が私にあるとしても、今ここで私生活としてのパートナーとして鳥羽さんが私を選んだら、事務所的にもダメージは免れない。




………だから、これで良いんだ。


鳥羽さんとはあくまで仕事上の付き合いに留めて、深くは付き合わないし干渉しない。



そうすれば陽菜乃ちゃんも潰れないだろうし、私も恭哉と結婚して仕事が更に軌道に乗るだろう。




………だけど、胸の靄が晴れないのはどうしてだろう……?



例えば、さっき。



鳥羽さんと一緒に会場を去る陽菜乃ちゃんを眺めていたら、言いようもない黒い感情に心が覆われた。



まるで、嫉妬…みたいな……。




それに気づいた時、どうしようもなく自分の感情をもてあました。



今更。



今更それに気づいたところで、どうにも出来ない状況には変わりがないのは、事実だったから……―――。
< 327 / 394 >

この作品をシェア

pagetop