桜色ノ恋謌
歩いて最初のキャラクターの元へ歩く私に、與羽さんが話しかけてきた。


「お疲れ様ー。やっぱりこのパーク内を歩くのは疲れるよね」

「帰りはクラシックカーで移動なのが唯一の救いですよねー」

與羽さんと並んで歩きながら、他愛もない会話をした。


で、ふと気付いてしまう。


……與羽さん…めっちゃ目立つ所にキスマークつけてるじゃん。


これ然り気に言っちゃっても良いのかな?つか…言った方がいいよね?


「あの…與羽さん?うなじのとこ…赤いマーク、ついてマスけど」

「えっ…!ウソ…っ」


いやいやマジですよ。


これ、メイクさんに隠して貰わなくていいのかな?


「やだ、ショールを巻いても良いかしら?」



すっかり顔を赤くした與羽さんが、照れたように口を隠して涙目になった。


けれど、仕事に差し支えても悔いの無いような與羽さんのその表情に、何故か胸がちりりと焦げるように痛む。

なんでなのかはよく分からないけど。



騒ぎを聞き咎めたメイクさんが、急いで與羽さんの首もとをチェックした。


「あー、目立たないようにコンシーラー塗りますから、ちょっと待って下さいね」


メイクさんと與羽さんが立ち止まってメイクをし直している間に、私達は先に移動することになった。


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