桜色ノ恋謌
向かう先は、ペルシャン・コースト。


ペルシャ風のキャラクターがいたり、アトラクションがあるエリア。


ここはメリーゴーランドや空飛ぶアトラクション等があるため、小さい子供でも身長制限がなく遊べるから、主に家族連れには大人気。


ここにいるキャラクターの一人から、まずはスタンプを押してもらう。


與羽さんが少し遅れてやってきて、撮影は再開された。



やっぱり、このパークに来てキャラクター達に会うと、少しだけテンションが上がってしまう。



けれど、昔とは違う感情が心を占めてしまっていて、それはそれで憂鬱にもなる。



昔、雑誌の付録の為にここで撮影した時の記憶が蘇る。



あの頃は、まだ何にも知らない新人で。


見るもの経験するものの全てが目新しく見えて、未知でも新鮮な世界が広がっていた。


怖いものなんてなかった。


だから、純粋にこのテーマパークだってうきうきしながら楽しんでた、あの時の仕事。


鳥羽さんと無理矢理乗った、あのアトラクションが遠くに見える。


それが、まるで今の私と鳥羽さんとの関係を表しているようで……。



今は、疲れた心を、昔と変わらないキャラクター達が癒してくれる。


でも、今の私にはこれは仕事だから、と、半ば義務感のプロ意識が楽しむ気持ちを上回っていて。



そんな自分に、なんでこんなにスレてしまったのかと嘆くように、ぼんやりと足元の影を眺めた。






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