桜色ノ恋謌

なんでマネージャーに付き合わなきゃなんないわけよ?


「いいから。付き合って」


鳥羽さんはスタッフさん達に撤収するからと声をかけて、私の手を強引に引いて何処ともなく歩き出した。



繋がれた手を振り払おうともがいたけど、鳥羽さんが強く握ってるから振りほどけない。


そのままずるずると引っ張られて、嫌々着いていく破目になってしまった。



「ちょっと!どこに行くんですか!?」


鳥羽さんの勝手な行動に怒りのボルテージが上がる。


「飯。疲れたんだろ?」


私の顔を振り返ることもせずに、鳥羽さんはパーク入り口にあるオフィシャルホテルの中に進んでいく。


こんなに目立つとこでご飯なんて!



「大丈夫。個室を用意してもらってるから」

「……個室って。そんなのあるの?」



敬語を使うのも忘れた私に、鳥羽さんがくすりと笑って振り向いた。


「久し振り。咲絢がそんな風に喋ってくれるの」


鳥羽さんが笑う。


それだけで、胸が苦しい。


「……別に。鳥羽さんには、マネージャー以上の関係は望んでいないし」


鳥羽さんだって聞いてるはず。


私と恭哉が結婚するって事は。


だから、今更鳥羽さんがあれこれ言ったってどうしようもないんだよ。



それに、陽菜乃ちゃんにこれ以上恨みを買うのも嫌だし。鳥羽さんだって、陽菜乃ちゃんとは満更でもない仲なんじゃないの?



だったら、私のことは放っておいてよ。



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