桜色ノ恋謌
ケジメをつける場所は、ここにしたかった。



咲絢と最初で最後にデートをした場所。



ここで、昔みたいに二人で話せば諦められるかと考えた。



だけど、俺がそう告げた途端に泣き出した咲絢。



泣くなよ。


泣いてんじゃねーよ。



じゃないと、諦められなくなるだろ。


気持ちだけじゃどうにもならない柵が、俺達を縛りつけてるんだから。



喩え俺が咲絢を想っていても。


あり得ないけど、咲絢が俺を想ってくれていても。


どうにもならない程、咲絢の名前は有名になりすぎた。


梶さんと咲絢の婚約のことはマスコミには伏せて口止めしてあるけど、それだってすっぱ抜かれるのは時間の問題だ。


もうここまできたら、諦めるしかないじゃないか。


自分の想いを殺して、女優としての《如月咲絢》を潰さないように微力ながらフォローする事。



俺に出来ることといったら、それしかないんだ。




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