桜色ノ恋謌
その日の午後、私と月島君は、早々にロケが行われる短大に行ってスタッフさんも交えての打ち合わせを入念に行っていた。

相変わらず、鳥羽さんは何か言いたげにしているけど、それにも今は気づかないふりをする。


その鳥羽さんの意味ありげな視線を振り切って、私は無理矢理役に没頭する。


私と月島君は、クラスの悪大将4人組の中で、唯一カップルとしてドラマの終盤あたりでくっつくことになっているんだ。

だから、そういう描写も自然と多くなってくるわけで。

月島ファンからの嫌がらせにもいい加減慣れてきたから、次はどんな嫌がらせをされるのかと、ワクテカしてしまう自分がいる。

今日のロケは、私と月島君が体育館倉庫にパソコンを持ち込み、担任教師のコラ画を作ってネットに流すというこれまた古典的な悪戯をやっちゃうシーン。


コラ画って、やられる方はたまったもんじゃないけど、やる分には面白い。

「な、これ動画サイトとかにあげたらすげー高評価いくんじゃね？なんたって業界人のネタ満載ですし」

いつものふざけたノリで、スタッフさんや共演者、旬な話題の人のコラを作っていた月島君が、本気とも思える真剣さで私を振り返った。

つーかそれ違法だろ。

呆れて白い目で睨むと、「ジョーダンだって」と、そそくさとデータを消した。


それに続いて「本番入ります！」の掛け声。




< 379 / 394 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop