桜色ノ恋謌
『なんだよ、改まって。こっちは暇じゃねーっつの』
メールで呼び出された大地くんが、私に向かって不機嫌そうに悪態をつく。
教師に対しては強気に悪戯を仕掛ける【私】でも、いざ好きな人を前にすると、なかなか思うように言葉が出てこない。
『あの…ね、あたし…』
勇気を振り絞るようにして、ゆっくり相手に近づき…。
そこで何故か私の体が宙に浮いた。
撮影現場の崖の斜面が緩くなっていて、足場が崩れたんだ…と気づいたのは、既に体が落下した後。
高さ10メートルの斜面を滑り落ちた私は、枯れ木に引っ掛かったまま、気絶した。