桜色ノ恋謌
薄れいく意識の中で、誰かが私を呼ぶ声を聞いた。
それはなぜか、悲痛なほど私の胸に響いてくる。
「…あや…咲絢…」
誰だろうか、その声の主は。
恭哉だったらいいのに、と思う反面、違う誰かを心の奥底で期待してる。
……もう諦めたのに。未練は残さないって決めたのに。
それなのに、なぜ私は『彼』に、期待を寄せるのだろう。
それが甘えだということも、自分でよく分かっている。
彼にまで甘えていたら、やることが陽菜乃ちゃん以下の行為にしかならないということも。
だけど、本当は。
胸が苦しい。
苦しいんだよ、昴くん…―――。