桜色ノ恋謌
無音で合図が出されると、《リン》と《行人》がしばらく無言で見つめあった。




『お前、誰?』


『……あなたには、関係ない』


そう告げて《行人》の前から立ち去ろうとする《リン》の腕を、《行人》が掴む。


『……お前とはまた会えそうな予感がする』


それを振り切って花びらの中に姿を消す《リン》。


《リン》が消えた方をみて、『……絶対に捕まえる……』と《行人》が呟く……。




「はいカットぉお疲れ様ー!」


良かったー!一発OKだー!


はぁっと大きく息を吐き出したあたしの前は黒い影で遮られた。


誰だ?



「……お前、意外にいい感じじゃん」

月島くんだ。

「あ…。ありがと、ございます……」


一応褒められたのかな、これ。



「ぶっちゃけ少女漫画原作のドラマなんか俺ら2人とも最初から馬鹿にしてたんだけどさ、お前のその衣装見たらなんかちょっと面白くなってきた」

「面白いって。どういう意味?」


面白いわけないじゃんこんな格好。頭は重いし目はカラコンのせいでチカチカするし。



「……メイド喫茶に来たっぽくて新鮮かも。その格好で『御主人様』とか言ってみ?」


ふっざけんな !!!


「誰が言うもんか !! つーか月島くんこそ『お嬢様』とか言ってみなよ」


あたしはせせら笑って月島くんに食って掛かった。


「お嬢様なんて柄じゃないだろ。明日も楽しみにしてるわ。じゃ、お疲れさん」


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