桜色ノ恋謌
立ち位置をスタッフさんに指示されて、月島くんと向かい合って立った。


昂くんが笑顔であたしに手を上げてくれる。




深呼吸をして、監督の合図を待つ。




5……4……3…2…………。


スタート。



『どうして、俺の前から消えたんだ……』


敵との戦いが終わると皆の前から姿を消した《凜》。入学した高校で《凜》を見つけた《行人》。

みつかった《凜》が《行人》から逃げ出したのは、自分に正直になれなかったから。

そんな《凜》の腕を《行人》は掴まえて離さない。


『腕を離してよ。……行人とはもう、なんの関係もないんだから……』

『そんな事言うなよ。ずっと一緒にいるって約束したじゃねぇか……』


弱々しい力で《行人》から離れる《凜》。


《凜》は迷うように空を見上げる――――。



って、あれ?昂くんがさっきまでいた場所にいない。



あたしの撮影には大体いつもいるのに。

まして大事なラストシーンなら、尚更見ててくれると思ってた。


昂くんがいない。



それをこんなに心細く感じてる。



『二度と俺の前からいなくなるな』


間近に迫った月島くんの顔にドキリとした。



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