桜色ノ恋謌
月島くん、じゃない。

彼は《行人》だ。


『好きだ、凜』

《凜》は《行人》にそのまま抱きしめられて、自分も本当は好きだった事を告げ……。


は?唇に触れてるこの温かいものはなんだ?



『ずっと……凜が好きだった』

『私も……本当は行人のこと、好き』


……ねぇあんた今あたしにキスしなかった !? こんなの台本になかったじゃん !!


『ようやく素直になりやがって。もう逃がさないから覚悟しろよ』

『恥ずかしいからやだ。……でも、たまにだったら、付き合ってあげなくもないけどね!』


そしてフェードアウトしていく……。


はずなのに!こいつまたキスしてきた!




「カット !!! 月島くん、ナイスなアドリブありがとう!」

「でしょ?これくらいやんないとね」


信っじらんない!ラストシーンにこれ使うの !? ごっさ嫌なんですけど!


「如月ぃ、ごっそーさん」


もう二度と顔見たくない!





2人揃ってスタッフから花束を渡された時も、あたしは月島くんとは視線も合わせたくなかったし、握手はわざとカメラ目線で応じたし。



だってさっきのあれは、あたしの………ファーストキス……だったから。


月島くんってマジ悪魔。
< 58 / 394 >

この作品をシェア

pagetop