桜色ノ恋謌
「……異動…ですか……?」


事務所に戻り昂くんと一緒に社長室に入ると、部屋には社長の他にキリッとした女の人が立っていた。



「休み明けから咲絢のマネージメントは、この高橋琴子(たかはし ことこ)に任せる。琴子は20年以上もこの業界にいるベテランだ。だから咲絢も安心して仕事に励んでほしい」




昂くんがあたしのマネージャーを外れる?


嘘……だよね?



「……まだ場数を踏んでない俺では、今からの咲絢のマネージメントは無理なんだ。咲絢にはもう捌ききれないぐらいのオファーが来てるから……」

「……やだ。やだよ、昂くん……」


昂くんがいつも見ていてくれたから、あたしは頑張ってこれたのに。

今からだって時に離れるなんて、できないよ……?



「人気アーティストのPVにCM、ドラマの端役。咲絢には《Shelly 》の撮影も控えてもらうわ。これからは全面的にTV重視のスケジュールを組みます」

「頼む」



他人事のように社長と高橋さんが言うことを聞いていた。


あたしの目に映るのは悲しげな顔の昂くんだけ。


「モデルとしては異例だけど《ぷれしゃすっ!》効果が大きかったのね。10代までの少女層だけじゃなくて、その保護者達も取り込めたから」



高橋さんが、怖い。


この人はあたしの事を商品のように評価する。




昂くんは違う。



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