桜色ノ恋謌
ねぇ、あたしいつも昂くんに貰うばかりで何も返せなかった。

温かい眼差しも、言葉も、みんな昂くんから貰ってばかりだったよね。

ココアだってあたしのために毎日買ってくれてた。




だから、今日は何かお返しをさせてよ。


「……咲絢」


ゆっくり振り向いて、今度はあたしから昂くんにキスをした。

慣れてないから、軽く唇に触れるだけの涙まじりのしょっぱいキス。


「今まで、ありがとう……。あたしも、頑張る、ね」






最後の最後に、あたしはちゃんと笑えてた?


今までカメラに向けた以上の笑顔のつもりだよ。


あたし、待てないから多分先に行くけど、ちゃんと追い付いてきてね。




いつまでも、待ってるから。





―――――昂くん――――。



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