桜色ノ恋謌
高橋さんは、あたしに壁を作ってるみたいだ。

自分の事をあれこれ聞かれるのが嫌なんだろうな、と感じてあたしもそれきり黙りこむ。


……昂くんは、最初から自分の事を色々話してくれたのにな。


学校に着いて車を停めると、高橋さんはあたしに今日のスケジュールを書いた紙を渡した。

「学校が終わったら連絡して。一応下校時刻にはここで待ってるけど」

「分かりました。……いってきます」



いってらっしゃい、の返事も、どこか計算して出したような声だった。















「……あれ?ウソ……」

上履きがない。

だって入学式の日に、確かに学校で使う物はちゃんと全部準備して置いといたはずなのに。

誰かが間違えて履いてったのかな?


あたしは下駄箱の横に置いてあったコンテナからスリッパを一足取り出して履き、教室へと向かった。



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