呪島~ノロイジマ~
「どうかしたの?」


立ち止まって下を見つめる敦也に向かって、瞳が首をかしげた。



「いや……何でもないよ」


敦也は笑顔を作ると、迂回した反対側の幹線道路を、上を目指して登り始める。




そして少し歩いたところで、ふと思った。



さっきの違和感……


つい最近、誰かが通ったような気がしたのだ。




――それだ。でも誰が……?



敦也は一瞬振り向いて、もう一度獣道を見た。


上から見れば、倒れた大木と茂った雑木で本線がなくなり、

横にそれる獣道が本線になっているように見える。



――まぁ地元の人が山菜でも取りに来たのかも……


そう考えるのが普通だよな。



敦也はまた上を目指して歩き出した。


三十分前に早紀が通った獣道に背を向けて……。

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