呪島~ノロイジマ~
「それにしてもほんまに久しぶりじゃのぉ」


保養所に遊びに来た若者二人を乗せて、その友人の船を曳航しながら、沖神港を間近に見た茂行が口を開いた。



「去年貴志の親父さんが幽霊に襲われたんを助けに行ったけど、

言うてもアレは、沖神に入ってすぐのセンミツんちの前のへんまでじゃったけぇ。

沖神の港をこんなに近くで見るんわ、ほんまに久しぶりじゃわ」



「そうか……ワシはそん時も漁に出とったけぇ、

沖神自体が二十何年かぶりじゃ」


「そうじゃったな。ダイちゃんは見とらんのじゃったなぁ、あの女の幽霊を……」



「ああ、じゃけぇ幽霊、幽霊ってみんなが騒いでも、

未だにそんなもんほんまにおるんか? って思うとる」


「おる。ほんまにおる。ワシだけじゃねぇ、あの時沖神に行ったもんは全員が見とるんじゃ」


茂行は真顔で大輔を見た。

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