呪島~ノロイジマ~
二人は倒木の場所までやってきた。


そこで初めて、早紀はさっきここで道を間違えたのだと分かった。


こんなところに木が倒れてなかったら、もっと早く帰れたし、

瞳たちともすれ違わなかった。



それに……自分と似た雰囲気の、アノ幽霊にも会わずにすんだのに……。



「どうかした?」


悔しそうに唇を噛んでいる早紀に、祐次が気がついて聞いた。


「ううん。何でもない」


早紀は無理に笑顔を作った。



「ならいいけど」


「うん」


「あんまり悲しい顔すんなよな。抱きしめて慰めてやりたくなっちゃうだろ。変な意味で……」


祐次がニヤッと笑う。



「バカ! まだ早いわよ」


「へへっ、じゃあ今夜に期待しとくよ」


「もう!」


早紀は口を尖らせたが、目は笑っている。


祐次のお陰で一瞬で重苦しい空気が明るくなって、早紀は祐次に感謝した。

< 320 / 716 >

この作品をシェア

pagetop