呪島~ノロイジマ~
真っ暗な海中に沈むと、一瞬どちらが海面か分からなくなる。


幸雄は必死でもがいた。



とっさに手に何か触れ、それを掴む。



幸雄はそれを光司の足だと思った。


ならば当然その上が海面ということになる。



掴んだ手に力を込めて引き寄せた。


光司は船に掴まっているはずだから、引っ張った幸雄のほうが海面に向かって進むはずなのに、

明らかに相手が自分に近づいて来る。




暗い海中で視界は悪いのだが……。


幸雄の目の間に引っ張った相手の顔が……。





潰れた顔の茂行だった。


がぼぉあ。


驚きのあまり幸雄は空気を全部吐き出してしまった。



――苦しい!


幸雄はパニックに陥ってしまった。

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