呪島~ノロイジマ~
敦也は建物の外に出て沖を見る。


さっきまでの雨も止み、いつのまにか月が出ていた。


一艘の船がこちらに近づいてきている。



「おーーーーい!」


敦也は大声をあげて手を振った。



が、しかし……


船は突然方向を変えて西の方に進み始める。



「お、おい! こっちだってば!」


敦也は焦って大声で叫んだ。

ここに保養所があって、自分たちがいることは分かっているはずなのに、

いったいなぜ方向を変えて、真っ暗な方に向かっているのか……?


「あっ」


敦也は思い当たった。あの辺りにシゲさんの船が座礁している。


おそらく船は先にそちらに向かうらしい。


「何やってんだよ! シゲさんはもう殺されてるんだよ! 先にこっちに来いよ!」


敦也はもう一度大声で叫ぶ。


もっとも大声で叫んでみたところで、当然エンジン音にかき消され、聞こえるはずはないのだろうが……。

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