呪島~ノロイジマ~
「彰ちゃん大丈夫?」


美春の声で彰子は我に返った。


涙が溢れて止まらない。



「美……春……」


「大丈夫?」



「ぁ……うん」


彰子は涙を拭った。


彰子は思い出していた。あの日起こった出来事を……。


あの時、一旦外に出た彰子は、由希子が自分のいるほうと反対に駆け出したのを見て、

もう一度建物の中に入ったのである。


一度捜したところは捜さないだろうという考えからだった。


そしてもう一度押入れに隠れた彰子は、ただひたすら由希子が捜しに来るのを待ち続けたのである。



けれど……待てど暮らせど由希子は捜しに来ない。

布団の中に隠れている彰子はそのままウトウトと眠ってしまった。
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