呪島~ノロイジマ~
早紀と泰博はその日のうちに島に渡った。


あれから三日しかたっていないのに、随分前に来たような気がする。


まず早紀は、美絵が親切にしてもらったというあのお店に向かった。

忌中と書かれた札が貼られた入り口の扉を開ける。


泰博が先頭に立って、挨拶をしたからなのか、今度は避けられることもなく、ちゃんと対応してくれた。


この家ではあの日、二人の死者がでている。



「妻の実家の菩提寺を探しています。この島のお寺はどこにありますか?」


「え?」


美春は一瞬驚いて、すぐ笑顔になった。


「この島にはお寺も神社もありません」


「え? そうなんですか?」



「ええ、みんな本土の源尚寺の檀家なんです」



「そうでしたか……」


「失礼ですが、なぜ?」


「えっ……ああ、別にどこでも良かったんです」


「え?」


「お寺なら……お寺に供養をお願いしたかったので、島にあるのかなぁと思って」



「供養ですか……」


「まだ成仏してないらしいので」


泰博が言った途端、美春は目を見開いて固まった。

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