呪島~ノロイジマ~
「それでもまだ半分の家は、その場に残っとった。

じゃけど、一人……また一人、不思議な死に方をしていってなぁ、

結局みんな島を捨てて出て行きよったんじゃ」


老人は遠い目で語り、輝之は何も言えなかった。


「そうこうしとったら、五年程前に、どこぞの会社が保養所を建てよった。

ワシらは大丈夫なんかと心配したけど、別に何も起こらんかった」


「はぁ」


「毎年のように夏になったら、誰かが泊まりに来とるようじゃけど、

一向に幽霊の話しなんか出んし、建って五年たっても毎年泊まりにくる人がおるから、

もう幽霊はおらんようになったと思うてな……

去年あの辺りに釣りに行ってみたんじゃ」


老人は輝之の目を見た。

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