呪島~ノロイジマ~
来たときとは違い、言葉少なに帰る。


駅に着いて電車に乗っても、会話は少ないままだった。


ただ、綾的には進展はある。


老人の家を出てからずっと、健太郎が隣にいてくれているのだ。


綾が健太郎のことを好きなことは、茶和子も美穂も涼子もしっているから、

みんなあえてそうなるように仕向けてくれているのかもしれないけれど、

今の綾にはそんな風に思う心の余裕さえなかったのだ。


なぜなら……


自分に覆いかぶさってきたあの幽霊。


それがまるで、自分の中に入っているような気がしてならないのである。


自分とは違う誰かの気配を、ものすごく近く……というか、本当に自分の身体の中で感じているのだ。


アレ以来ずっと、寒気が治まらない。


そんな不安げな綾の手を、ずっと健太郎が握っていた。

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