呪島~ノロイジマ~
ガチャ。


玄関が開く音。


キッチンで夕飯の支度をしていた早紀は、愛娘の帰宅に作業の手を止めて迎えに出る。


早紀にとって、夫と娘との生活こそが、何ものにも勝る幸福なのだ。


だからいつも、娘と夫の帰宅にあわせて、玄関まで迎えに出る。



「お帰りぃ~」


早紀の顔を見たとたん、綾が満面の笑みを見せた。



「久しぶりだねぇ早紀。元気そうで良かった。でも、ちょっと老けたかな」


「え?」


驚いた早紀の横をすり抜けてリビングに入る綾。


「ちょっと綾」


「ん? 何ママ?」


綾が振り向いて答えた。



「今アナタ……」


「え?」


綾が不思議そうな顔をする。


「久しぶりって……」


「は? 何言ってるのママ」


綾が眉をしかめた。


今のはいったい何だったのか?


早紀はそのまま動けなかった。

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