呪島~ノロイジマ~
あの船には東京の中学生たちを送ってきた、五色島役場観光課の村越の父が乗ったままのはずである。



「金子さん電話! 消防、いや警察だ!」


松本は金子に言うと慌てて部屋を飛び出していく。


由加里はドキドキして振るえる手で、受話器を掴もうとして取り損ねた。


拾い上げてすぐに110番と押す。


二階から東京の中学生たちと、同僚の平尾祥子が駆け下りて来て、そのまま外に飛び出して行くのを見ながら、受話器を耳に当てた。





『――――……』



(あれ? 繋がってないのかしら?)


そう思った瞬間。




『ぅふふふふふふ』



女の子の笑い声が聞こえた。



「きゃあああ!」


由加里は思わず持っている受話器を放り投げ、ドキドキして口から心臓が飛び出しそうになるのを必死で耐えながら、自分の携帯電話をポケットから取り出した。

< 664 / 716 >

この作品をシェア

pagetop