呪島~ノロイジマ~
後藤の操船する高速艇が岸壁に近づくにつれ、それが何かハッキリした。


燃えた船の残骸である。



一体何があったのか分からないが、一面に燃え残った船の残骸が散乱しているのだ。


「何があったのよ?」


青ざめた顔で乗せてきた女性が叫ぶ。


おそらくこれは……例の東京の中学生を乗せてきたという、五色島の漁師の船だろう。


ということは、中学生たちにも何らかの事態が生じた可能性がある。



それにしえも、接岸したというのに、美術館の中から誰も出てくる気配がない。


何があったのか分からないが、市役所の職員たちはもう外部に連絡を取ったのだろうか?


後藤は無線機を取ってとりあえず会社に連絡しようとした。


が……まったく繋がらない。



仕方なく携帯電話を取り出す。



圏外だった。


船の汽笛を鳴らしたけど、建物の中から誰も出てくる気配がない。


船に乗せてきた女性が船から飛び降りて美術館に走っていくのを、後藤はそのまま見送っていた。

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