呪島~ノロイジマ~
「この中は、あの慰霊祭のときの念が残っているから、まぁ結界みたいなもんで、俺たちにとってはアイツに支配されない安全地帯だから、ずっとここにいたんだけど……」


祐次がまた優しい目に戻った。



「まさかオマエが血相を変えて逃げてくるとは、夢にも思ってなかったよ」


「祐次……」



「老けてたけど、すぐに早紀だって分かったよ」



「ちょ、老けてたは余計でしょ!」



「そうだな」


祐次は満面の笑みで微笑む。



「今度こそ本当のお別れだ早紀」



「祐次……」


「長生きしろよ。次に会うときはお婆ちゃんだな」


「うん。じゃあその時まで待っててくれる?」



「いや、旦那さんに悪いからイイや。じゃあな」


祐次は最後にもう一度微笑むと、そのまま姿を消し、さっきまで開いていた扉もなくなって、またただの岩肌に戻る。



「もう出ても大丈夫なのかなぁ?」



背後で健太郎が呟くのを、早紀は溢れ出る涙を拭いながら聞いた。

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