そして僕は恋を知る


君はすごくあの子のことを大切にしてたよね。

あたしが羨む程、大事にしていて、尽くしていた。

君の家は厳しいのに、塾が終わった後もあの子に逢いに行ってたよね。

帰るのが遅くなったら怒られるのわかってたのに。

それほどあの子のことが好きだったんだね。

あたしはうらやましくてしょうがなかったよ。

でもやっぱり帰るのが遅すぎたんだね。

その日は君からなかなかメールが来ないからどうしたのかなって思ってたら、夜の12時くらいにあの子から電話がきた。

内容は、君が帰るのが遅すぎて、家には入れなくなったから、今2人で一緒にいるというもの。

あの子はあたしに今から出てこれない?と言った。

本当は眠かったけど、君がいるって聞いて、行かずにはいられなくなった。

学校外で逢うのは初めてだったから、すごく嬉しかった。

まともに話したのも、そのときが初めてだった。

3人でマンションの屋上にずっといたよね?

あの子がちょうどいなくなったとき、2人きりで少し話したね。

君はもう覚えてなんていないだろうけど、あたしは君の言葉も表情も全部覚えてるよ。

朝が近づくにつれて、この時間も終わる。

あの子の家の前まで3人で行ったとき、君は帰るときどうしようって言って、しばらくそこを動かなかったよね。

それでもやっぱり朝になって、帰らなきゃいけなくなった。

あの子は家に入っていって、あたしたちは2人で帰った。

きっと君は家に帰りたくなかったんだね?

あたしを家まで送ってくれた。

話をしながら2人で帰ったの、忘れないよ。

またあとで学校で逢おうって言って、別れたよね。

でもやっぱり君は家が大変だったからその日は学校に来れなかったよね。

あの子も来るって言ってたけど、いつものサボり癖で来なかった。

あたしは遅刻して行ったら、先生にすぐ呼び出されてオールのことを沢山聞かれた。

でもあたしは嘘をついた。

このことはあまり言わないようにしようって3人で話してたから。

でもそれは大人にとってはよくない嘘だったんだね。


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