夢のまた夢【短編集】
こぼれ落ちる砂をかき集めて
私の脳は数年前より機能していない。

東京の大きな病院に勤める娘がある時、
「お母さんはアルツハイマーなんだよ」
とかなんとか言ってたので
そうなんだろうと思う。

そう言えば、
何年か前から私の頭の中には蝉がいて、
ジジジ、ジジジと煩く鳴いている。

物を考えようと思っても
煩くてゆっくり考えることも
できやしない。

その内、
面倒になって考えることも
しなくなったら
今度はサラサラ、サラサラと
私の脳から大切な大切な記憶が
こぼれ落ち出した。

慌てて両手で受け止めるのだけれど、
砂のようにそれは
指の隙間からいくらでも落ちてゆく。

そうして私の頭の中から
大切な記憶達はどんどんと
消えていった。


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