夕陽のあの人
その人は名前を教えてはくれなかった。

でも夕陽の見える時間、彼女はいつもそこにいた。

市立図書館2階一番西側の窓際の読書コーナー。

いくつも机や椅子があるのに、彼女はいつもその席に座って本を読むでもなく退屈そうに夕陽を見ていた。

彼女は大学生で、俺は小学生。

俺は毎日図書館に通った。

あの人はいつも面白い話をしてくれた。

誰よりも俺の話を聞いてくれた。

それが何より嬉しかった。

年の差はあったけど、幼稚で一方的なものだったけど。

確かにそれはあの人への恋心だったと思う。

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