Sympathy For The Angel
「やだ、ご飯食べてなかったの!?」

「一人で食べるのが寂しかったから……」


悪戯がみつかった子供のように、美優紀は首を竦めた。


「でも、先にお風呂は頂きました」

「いいよ。お腹空いたね。食べようか」


はい、と頷いた美優紀が冷めたおかずを温めていたので、私は取り皿や箸を用意する。




「今日は南瓜かー。これも美味しそうだね」

「お口に合えば良いんですけど……」


何を言う。美優紀の味付けは優しくて、私は大好きだ。


「そう言やさ、美優紀がいる間にうちの両親が帰って来なかった?」


母親は美優紀を預かったこと、父親から聞いたんだっけか?


「はい、椿さんのお母様が帰って来ましたけど、食事はなさらずすぐ出ていかれました」


さすがあの母親だよね。美優紀の夕食に目もくれないなんてさ。


「うちの両親は気にしなくて良いからね。空気みたいなもんだし」


答えに詰まったのか、美優紀は困ったように曖昧に笑った。


「明日は樹と用事があって遅くなると思うから、ちゃんと食べて寝てるんだよ?」

「ご飯はどうしますか?」


私が食器洗浄機に皿をセットしていると、美優紀が食後のコーヒーを淹れてくれていた。


「んー。じゃあさ、樹の分も作ろうか。皆で一緒に食べてから出掛けようかな」

美優紀は大きく首を縦に振り、ダイニングにコーヒーを運んだ。




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