Sympathy For The Angel
「……誰?」
「私の妹分。一緒に連れて行く。駄目なら今日は行かない」
黒塗りの外車で迎えに来た八神諒にそう言い放った。
「……分かった。助手席に座れよ?それぐらいは妥協してもらうからな」
仕方がないので美優紀を助手席に座らせると、八神諒は私を先に車に乗せた。
そして車は音もなく緩やかに走り出す。
「……ねぇ。今日は何の用?」
私は会いたくないんだけど的な表情で八神諒を見た。
「お前を《良い所》に連れて行こうかと思ってな」
「良い所?別に興味無いんだけど」
如何わしい所なら即逃げてやる。
「まあそう言うなよ。掛井にいい土産話が出来るだろうからな」
………樹に?
だとすれば、『狂宴』に関するどこかだろうか?
何しろ狂宴に関しては、溜まり場や本拠地がどこなのかは誰も知らない。
樹やヒロが躍起になって探させていたとも言っていたぐらいだし。
車は30分程走っただろうか?
住宅街を過ぎ、いつしか郊外の樹木が立ち並ぶ辺境な土地へと差し掛かっていた。
だが民家は疎らにだが建っているし、都市部に通うのには然程困りはしないだろう。
「どこ、ここ?」
「着けば分かる」
それからお互いに無言で外を眺める事10分あまりで八神諒が言う《その場所》に着いた。