Sympathy For The Angel
「へぇ。それで?アンタにも何か不満があって、『狂宴』なんてチームを作ったとか言うの?」


馬鹿にして私が鼻で笑うと、苦々しく口を歪めた八神諒が一言ポツリと漏らした。


「あるさ、不満なら……」


医者一族の家系に生まれ、何の迷いも憂いもなく生きているだろう八神諒に、何の不満があるのか。



助け合いながら必死で今を生き抜く樹達に比べれば、それはどうせ贅沢な悩みに違いないだろうに。




「諒さん、新しいオンナっすか?」

私達の横を通り抜けながら入ってきた、癖っ毛金髪の男の子が不躾にも八神諒に話しかけた。


誰がコイツのオンナだよ!?


「『紅蓮』の掛井のオンナだ。そのうち『狂宴』のオンナになるだろうがな」

「マジっすか!?」

マジじゃねーよ。

しかも何故か興奮してんじゃねーよ。



「上がりますか?」

私を指してその金髪の男の子は言った。

「いや。今日は帰す。だが夜になったら召集かけとけ。会議だ」

「分かりました」


興奮覚めやらぬ金髪君は、小走りに皆が集まる一群へと飛び込んで行った。

ちょっと、変な噂をたてるのだけは止めてよね。



再び車に乗り込むと、痛いほどの沈黙が車内を包んだ。




「もうそろそろ昼時だな」

「……アンタと一緒に飯なんか食いたくない」


八神諒の方を見向きもせず、私は突っ撥ねた。


< 117 / 150 >

この作品をシェア

pagetop