Sympathy For The Angel
だがしかし、車は医大附属病院の駐車場に停められた。




「……医大になんか来たくないんだけど」




ここでもまだ見せたい何かがあるのだろうか?もう沢山だ。




「違う。病院の横に用があるんだよ」



車から降りて歩き出す八神諒の後を、美優紀と並んで追いかけた。




病院の横に建つ、一軒の古びた洋食屋に入った八神諒が、窓際の卓に着いて私達を手招いている。


「昔からここが気に入ってんだよ、俺は」

「随分庶民的だこと」



皮肉が通用しないのか、八神諒は苦笑してそれを受け流した。


隣に座る美優紀を見ると、何故か嬉しそうな顔で店内を見回している。


「美優紀?どうした?」

はにかんだ美優紀がお冷やを一口含んで、カウンターの上のメニューを見詰めていた。

「このお店、実は昔、お兄ちゃんとたまに来てたんです。だから、懐かしいなぁ…と思って……」

「そっか」

「好きなもん頼めよ。遠慮はすんな」


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