Sympathy For The Angel
「………もしもし、ハヤト……?」

沸き上がる不安を堪えてハヤトに電話をかけた。

『椿さん!?どうしたんスか!?』


どうしよう。何て言って謝ればいいんだろう?


「ごめん……。私が連れ出したせいで美優紀が……倒れた……」

ハヤトがごくりと唾を飲み込む音が聞こえた。


『今どこッスか!?』

「医大のICU にいる。……今すぐ来れる……?」


急いで行きます、というハヤトの言葉に心から安堵した。


その時、ICU の特殊な扉を開けて、中から八神諒が出てきた。




「酸素の補給をしたら、大分良くなってた。問題ない」

「……良かった……」


待ち合いの椅子に崩れるように座ると、ハヤトが廊下を突っ切り走って来るのが見えた。

「っ美優紀は!!」

私の肩を揺さぶり、必死の形相でハヤトが吠えた。

「今投薬を施した。命に別状はない」

八神諒が呟いた。

すると、はあぁ、と大きく息をついて、ハヤトも椅子に座り込んだ。

「椿さん、ありがとうございます。椿さんがいなかったら美優紀がどうなっていたか……」


「……助けたのは、この……八神諒、だよ」

「……八神……?」


目の前に立つ八神諒を、ハヤトは睨んだ。


「……心臓血管外科の、八神と何か関係があるんスか……!?」

「それは俺の叔父だ。……お前、あの女の兄貴か?」

それがどうした、という呈でハヤトは八神諒を睨むことを止めない。


「あの女、肺動脈狭窄なんだな?さっき叔父貴が来て、そうだと言っていた」

「……その八神は、美優紀を見捨てたんだろ!?アンタら医者のっ……!」

ハヤトが八神諒の胸ぐらを掴み今にも殴りかかろうとした時―――。


「止めないか!ここは病院だ」

冷静に放たれた声。




振り返ると、父がそこに静かに佇んでいた。






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