Sympathy For The Angel
コール音が暫く続いた後、聞きたかったその声が応えてくれた。
『椿か?』
樹。樹に会いたいよ。
『ハヤトにさっき電話で聞いた。無事で良かったな』
良くないの。全然……だって。
『美優紀が無事だったんだから、落ち込んでんなよ』
「……うん」
『八神諒が助けたんだって?』
「うん。ねぇ、樹。狂宴の本拠地が分かったよ」
一瞬、受話口から伝わる樹の雰囲気が鋭さを増したようだった。
「八神一族が運営している児童擁護施設の中。アイツ、施設の子達を兵隊にしてた……」
『そうか』
樹の声はいつしか落ち着きを取り戻し、淡々としたものに変わっていた。
「………私は、汚い人間だよね?」
誰か私を責めて。
「父親が美優紀を自分の道具に使う事を、……止められなかったんだ……!」
漏れる嗚咽に道行く人々が振り返る。
『……お前はさ』
慰めないで。
私にそんな価値はないから。