Sympathy For The Angel
自宅に着くとガレージに車が二台停まっている事で、両親の在宅を知った。
ただいまも言わず玄関の扉を開ける。
そのまま二階の自室に逃げ込もうとしたのに、母親が私を呼んだ。
仏頂面を崩さずリビングに入ると、両親が揃ってソファーに座っていた。
「……何?」
極力この人達とは話をしたくない。
「あの娘の手術が1月の10日に決まった」
「……なんでそんなに急に決まったの?」
返事なんて聞かなくても分かってる。
「今の心臓血管外科の内情から、そう判断された。……まぁ、選挙の前に、と言う事だな。選挙後だと三橋教授の評判が悪くなる。お互いに悪評が立たないに越したことはない。八神准教授にも未来があるしな」
「ふーん」
そんな事情、私達が知った事ではない。
「あなた?先刻のあなたのお話だと、これからは三橋教授とも懇意になさるのよね?だとしたら、三橋教授にはお歳暮ぐらい贈らないとならないでしょう?」
「何か用意をしておけ。私が持っていく」
「嫌だわ。今までコンペでは三橋教授の奥様とはお話しした事がないの。何がお好きなのかしら?」
気持ちが悪い。
吐きたくなる。