Sympathy For The Angel
学校が終わると一旦家に戻り、上下とも黒い服に着替えた。
出かける前に水を飲もうとキッチンに行くと、珍しくそこに母がいた。
到底40代には見えないような若作りは、家族の為ではなく若いツバメのためだろう。
ガッチリ開いた胸元と、年甲斐もない短すぎるスカートにはうんざりする。
「……出かけるの?」
「まあ」
アンタには関係ないだろ、という言葉は寸でのところで飲み込んだ。
「明後日の日曜日、医療関係者とその家族の為の親睦パーティがあるの。アナタも来るのよ?」
「は?行かないし」
パーティなんか、招待されてもいつも無視して行っていないし。行く気もない。
「それがね、医大のOBの偉い先生が、是非アナタを連れてきて欲しいってわざわざご指名下さったの。断るわけにはいかないわ。準備していて頂戴?」
母はそれだけ言うと、何事もなかったかのように立ち去った。
誰がそんなけったくそ悪い集まりなんかに出るもんか。