Sympathy For The Angel
「椿さんと、二人で少しお話しがしたいのですが、よろしいでしょうか?」


寿司屋の暖簾をくぐり、外に出るなり八神諒が両親に言った。


アンタと二人きりとか嫌なんだけど。


だけどこの両親は満面の笑みを浮かべて私を売った。


「諒…君ならば安心だ。だが、遅くならないうちに戻してくれよ?椿はこれでも嫁入り前なんだから」


さっきの私の態度に何か思うところがあったのか、父親は八神諒を名前で呼んだ。


最初からそうすれば良いのに。



「そこのカフェにいますので」


軽く微笑んだ八神諒の前に、何故か美優紀がやって来てお辞儀した。

「あのっ…。私が倒れた時、介抱して下さってどうもありがとうございましたっ」


美優紀が赤い顔で八神諒をみつめている。

しかも軽く吃ってるし。

何だろ、これは。


「いや……。問題がなくて良かったな。手術までは無理すんなよ」

美優紀を見る八神諒は優しげで、少し意外な感じがした。




「私達は先に帰るよ。諒君、椿を頼むな」


八神諒の肩をポンポンと叩き、両親と美優紀は去っていった。




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