Sympathy For The Angel
だから、私は決断しなければならない。


『蘭』と、『蘭を支える彼女達』の為に。


「会議の前に、どうしても樹に話がある」

「樹は今来客中で」

「構わない。部屋に入って待たせて貰う」


追い縋るヒロを無視して、私は三階に辿り着いた。


三階の一番奥の樹のドアの前に佇み、大きく深呼吸をする。


そして聞こえてきたのは……。


「あっ…ン。やっ、そこ……んン…」


成る程ね。


会議の前に、樹はオンナを連れ込んでた訳か。

まあ、それでも別に構わないけど。



勢いよくドアをノックし、返事を待たずして私はドアを開けた。


「やっ……だ!何なの、このオンナ!!」

さっきまで樹の下で嬌声を上げていたであろう恥態はどこへやら、すっかり般若のような形相で睨むオンナには、苦笑するより他はない。

痛んだ茶髪を流行りに巻いて、濃い化粧のそのオンナは、おそらくまともな高校生などではない事だけは明らかだった。

つーか、どうみてもキャバ嬢にしか見えないがな。


「……何しに来た?」


不機嫌さを隠そうともせず、上半身に衣類を纏わない樹が私をねめつけた。

「会議の前に大事な話があって来たんだけど。邪魔なら後にするわ」

「分かってんならさっさと失せろや。お陰で萎えた」

「それはオメデトウゴザイマス。じゃ、後で」


それだけを吐き捨てると、後ろ手にドアを閉めて私は部屋を後にした。



「だから行くなっつったじゃん……」


ヒロが階段の上に座り込んで私を軽く睨んだ。


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