Sympathy For The Angel
「ドレスなら私の水色のがあったでしょう?どうしてそれを着ないの!?」


煩い。

ヒステリックに叫ぶ母を尻目に、私は自分で買った深紅のワンピースに袖を通した。

メイクもキツく見えるような、態と挑発的なものにしている。


「やだわ。皆さんが悪印象を持たなければいいけど……」


なら連れていくなよ。私は乗り気じゃ無いんだし。


「まあ良いじゃないか。椿は元が良いから、何を着ても似合うんだよ」

父の歯の浮くようなお世辞にも虫酸が走る。


「準備はいいか?そろそろ出掛けようか」


先日母が言っていた医療関係者のパーティに参加することを、渋々父に承諾させられた。

曰く、今度の医局選で例の医大OBの協力を得られれば、父が要職に就ける事は間違いないから是非とも頼むと、土下座までされて泣きつかれたのだ。


父の土下座は見ていたかったが、それでも居心地が悪くなったのは事実なので仕方なしにこうして茶番に付き合っている訳だけれども。



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