Sympathy For The Angel
いつもはバイクに乗り易い格好でいるせいか、ヒラヒラのワンピースもヒールが高い靴も、窮屈で嫌になる。

父が運転する高級車に乗って、今から連れていかれる別世界に思いを馳せる。


――――違う。


私が望む世界は、煌びやかなシャンデリアが輝くホテルでもないし、高級食材に贅を凝らした料理なんかない世界だ。


樹やエリカ、ヒロに真依や司、紅蓮や蘭の皆が笑って過ごしたあの時間。

それこそが私の望む全ての世界。


「さ、着いたよ」

父の先導でパーティの会場に案内された。

懇親会とは名ばかりの、医局選のためのコネ作りであることは一目瞭然だった。


胸糞悪い。


こんな茶番に付き合いたくない。


紹介された著名な医師達に軽く挨拶を済ますと、私は見つからないようにバルコニーへとこっそり移動した。


手摺に凭れて携帯を開いて見るが、今のところ誰からも連絡は入っていない。

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