Sympathy For The Angel
「……この格好じゃ逃げようがないし。いいから会場に戻って……」


私の携帯が震えたのはその時だった。

急いで取り出し、相手を確認するとすぐに通話状態にした。

「ルカ!?どうした!?」

だが、電話の向こうから聞こえてくるのは激しい息遣いだけ。

それでも構わず、ルカに向かって言葉を掛ける。

「ルカ!?今どこ!?何があった!?」

『っ…!海浜公園のっ…!』

「海浜公園!?誰かにやられたのか!?」


自分でも、身体中から血の気が引いていくのが分かる。

「他に誰かいるのか!?」

『ミヤとユキノさんがっ…!」

「分かった、今すぐ行くから待ってろ!!」


電話を切って、エントランスに向かって駆け出す私の腕を、八神諒が掴んで引き留めた。


「お前、その格好で、しかも単車なしにどうやって海浜公園まで行くつもりなんだよ?」


パシッと手を払い除けて、無言で階段を駆け降りた。



外に出て、急いでタクシーを探す。


刹那、目の前に大型の単車が横付けしてきて、乗っていた男が無言でメットを渡してきた。


相手が八神諒でも、躊躇している暇はない。


急いでそれに飛び乗ると、バイクは疾風のようにスピードを上げた。






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