Sympathy For The Angel

ルカが言った海浜公園に着いてから、めぼしい場所をあちこち探してみたが、騒ぎになっているような場所はなかなかみつからなかった。


まさかと思い、冷蔵コンテナの方に向かうと、微かにだが女の悲鳴のような声が聞こえてゾッとする。


その場所に向かって私が駆け出すより早く、黒い影が前に飛び出た。


現場に着くと、衣服は破れてはいるものの、私に連絡してきた３人はどうやら無事だった様子なのにはホッとした。


彼女達を凌辱しようとした輩が７人ほど、あっという間に目の前の黒い影に叩きのめされて伸びている。



「椿さんっ…！」

怖かっただろうに。

彼女達を抱き締めながら、目の前にいる八神諒に声をかけた。



「……今回は、ありがとう。お陰でうちのコ達が無事だった……」


八神諒は私に返事をすることはなく、叩きのめした相手の男の髪を掴んで持ち上げた。



「よぉ。てめぇら、どこのもん？」


ニヤリと笑う八神諒の顔は、まるで研ぎ澄まされたナイフのようで。


「…え…『炎龍』…ッス…」

掴んでいた頭を勢いよく地面に叩きつけると、八神諒はその男達に言い放った。



「お前らのアタマに言っとけ。『紅蓮』トップのオンナの遊佐椿は、これからは俺達『狂宴』のオンナになるってな。手ぇ出したらこんなもんじゃ済ませねーよ」


八神諒のその言葉を聞くと、男達は一目散に逃げ出した。


後に残された私達の間に、冷たい12月の潮風が吹いていく……。





.