Sympathy For The Angel
皆をそれぞれの家で降ろすと、運転手が今度は私の家の場所を聞いてきた。

そう言えばこの人は、八神諒の家のお抱え運転手さんなのかな……?


上手く働かない頭を使ってボーッと外を見ていると、「着きましたよ」と、愛想がない声が降ってきた。

「あ……。すみません、ありがとうございました」

ペコリと一礼して車から降りると、車は音もたてずに静かに走り去っていく。



家に入ろうとしたところで携帯が鳴った。

着信相手を見たが、知らない番号だ。

一瞬出ようか出るまいか迷って、結局出る事にした。もし番号も知らない蘭のメンバーだったら困るし。


「はい。誰?」

とは言え、警戒の姿勢は崩さない。


『誰って随分ご挨拶じゃね?さっきあんなに世話してやったのに』

含み笑いを漏らす、コイツは苦手だ。

「八神諒。ちゃんと礼は言ったはずだけど?」

コイツには必要以上に関わりたくない。

『よく考えたら送り賃まだ貰ってないんだよな。だからお前の体で払って貰おうかと思って』


ふ ざ け ん な 。


「用がないなら切る。つーか最後に一つ聞きたい。私の携番は誰から聞いた?」

可能性としては、あの人達以外いないと思うけど。

『お前の親父さん。ま、近いうちにお前は狂宴のオンナになる。それは絶対だ。よく覚えておけよ』

「は!誰が!」


通話は八神諒の馬鹿笑いを残して一方的に切られた。


気分が悪い。


この窮屈な服も、娘を昇進に利用する汚い親達も、得体の知れない八神諒も。



そんな事あるわけない。


私が、樹以外のオンナだと認識されるなんて。


樹の横に他の女がいても、私の隣には樹しか要らない。





その気持ちは、ずっと変わらないと思っていた―――――。





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