Sympathy For The Angel
次の日の昼近く、ファストフードにエリカを呼び出し昨日の粗方の顛末を語って聞かせた。


「は?狂宴のトップ?そっか、そっちのイケメンに鞍替えするのかぁ!」

「違ぇよ」


トレイで軽くエリカの頭を叩いたが、本人は悪びれもせずケロっとしている。

エリカが本気でそんな事を言わないのは、私が一番よく分かっている。



「にしても厄介だね。今この時期に、噂流されたら紅蓮は壊滅的なダメージを負っちまう」

「ん……。ヒロには悪いことしたなって思ってる」

「アイツは紅蓮の何でも屋だから別にいいけどさ。紅蓮のトップのオンナが……」

「だからさ、私はもう紅蓮のオンナじゃないってば。幹部会議に来てたキャバ嬢がトップのオンナなんじゃないの?」

「うっわ、紅蓮も質が落ちたもんだわ」


エリカは茶化して笑うけど、実際問題、私と『蘭』が抜けた事が紅蓮を益々窮地に追いやったと考えて然るべきだろう。

蘭は、紅蓮の他の傘下のチームに比べれば、それ自体は非力なレディースに過ぎないが、その存在となれば意味が違ってくる。

紅蓮にとっての蘭は、言わば女房役と言ったところなのだから。


その女房役が大黒柱の紅蓮を見限ったとなれば、一枚岩だった紅蓮全体に亀裂が入る。


「でも、さ。それを乗り越えられないようなら、紅蓮の幹部は務まらない…じゃないか?」


エリカが、コーヒーのストローを弄びながら、無心に呟いた。

「なんか、ヒロにばっかり迷惑かけてるね」

「いーんだよ。アイツは紅蓮の雑用係りだから」

エリカの軽口には、少し救われたような気がした。


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