Sympathy For The Angel
『もう紅蓮の下にまで浸透してる。椿が紅蓮を捨てて、狂宴の下に入ったって。樹にはそれ聞かせたくなかったんだよ。なのに司が樹に言いやがった。……なぁ、椿』

「何よ」

『その噂は嘘だよな?蘭は紅蓮を抜けたけど、お前は、樹を……』

「私は樹の側にありたいと願ってる。けど……」

『けど、何だよ?』

「状況が変わりすぎて、私にも手が出せない結果になりつつある、かも知れない」

『……んだよ、それ……』

「私だってどうすれば良いのか分かんなくなってんだよ。けど、エリカや真依達には火の粉がかからないように努力はする。最悪私だけが我慢すれば良いだけの……」


駄目だ。喋り過ぎだ。


『おい。お前、一体何しようとしてる!?』

「何でもない。切るよ?樹を探してくる」

『ちょ待て!!おい』


最後まで聞くことなく、ヒロとの通話を一方的に打ち切った。


玄関には既に父の靴は無かった。私が部屋に籠っている間に出掛けたらしい。

多分愛人の所だろうが、そんな事はどうでもいい。

どうせ母も、若い愛人の安いアパートにでも行って今日は二人とも帰っては来るまい。


スウェットの上にダウンを引っ掛けて、すっかり暗くなった外に出た。


空からは雪が降っている。



闇夜に浮かぶその白い雪が、人の骨灰に見えて、私は少し身震いをした。
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