Sympathy For The Angel
部屋の暖房を強めに設定して、その前に樹を座らせる。


「何か飲む?」

飲み物を用意しようと立ち上がると、樹がいきなり私を羽交い締めにした。

「ちょっ…、樹!?」

慌ててその体を押し返すものの、流石に男の力には叶わない。

とうとう最後は私が根負けして抵抗を諦めた。


「……どこにも行くなよ……」


ここに来て、初めて樹の瞳が揺れた。

「ずっと側にいるっつったじゃねぇかよ……」

こんなに弱くて、切なげに揺れる樹を見たのは二回目だ。

「あん時、何があっても絶対俺から離れないって。お前、そう言った」




樹が自分の過去を私に打ち明けたその日、確かに私はそう言って樹に誓った。


《何があっても、私は樹の側にいるよ》



私が誓約した時の、樹の幸せそうな顔は今でもよく覚えている。



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