Sympathy For The Angel
それなのに今、打ち捨てられた仔猫のように切なく凍えて必死に私にしがみついている。

瞳だけじゃない。

今や、声まで震えていた。

「私は、樹を裏切る気も離れる気もない。その気持ちは昔も今も変わらないよ?それじゃ納得出来ない?」

樹は私を抱き締める力を更に強めた。

「じゃあ……狂宴って何だよ。何であんな噂が流れてんだよ……?」


泣き出しそうなその声は、とても大の男が出しているとは思えないほど弱々しい。


「この前、親に無理矢理連れてかれたパーティで偶然『狂宴』のトップだって男に纏わりつかれたんだよ。で、その後他のチームに襲われてた蘭のメンバーをソイツが助けてくれて……」

「蘭を襲ったのはどこのチーム?」

「『炎龍』って名乗った」

「分かった。ソイツらは何とかする」

「……樹?シズはどうしてるの?そのせいでルカが蘭を抜けたんだよ?シズに無視されて……」



樹の顔を覗き込んだが、樹は何も語らず視線を逸らした。


「ルカがシズと別れるかも知れないのは、見ていて私も辛いんだよ……」


私も樹の背中に腕を回した。

樹の体はいつからこんなに逞しくなったんだろう?



私の体に回していた腕をほどくと、樹が今度は私の髪に指を絡ませた。

片手で顎を掬い、ゆっくり顔を近づける。


久しぶりの、樹のキス。


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